母の日

お母さんに電話をかけた。両親と離れて暮らす以上、母の日等イベントがあるときは連絡の一本でもしないとあとでなに言われるか分からない(笑)午後3時頃にかけると、寝起きの母の声が。気持ちよく寝てたのを起こしてしまったらしい。

でもそんなことに母は気にもせず、「さすが、母の日だからちゃんと電話かけたのね(^^;」とひとこと。それから家族のこと、さっき食べた昼飯のこと、社会人として気が緩みすぎているdaichomanへのお説教…などなど他愛もない話を気づけば50分以上も話続けていた。

その会話のなかで母がいきなり「ケーキが食べたいな」と言ってきた。あまりに唐突だったので?マークを浮かべていると、母は「あんたが中学生くらいのとき、母の日に近くのお菓子やさんでケーキを買ってきたじゃない」と。そーいえばそーだった。中学時代の同級生の親がやっているケーキ屋があって、母の日に買いに出掛けたことを思い出した。

その同級生とは塾が同じで、たまに店で余ったというケーキを持ってきては塾のみんなにふるまってくれた。そのとき食べたパイシュークリームがすごく美味しかったのだ。そうだ、このシュークリームを母の日にあげよう!それに安いシュークリームだったら自分の少ない小遣いでもなんとかなるかも…という魂胆だった気がする。

母の日当日、チャリをかっ飛ばしてケーキ屋へ向かう。中にはいるとまったりとしたあまい香り。そのケーキ屋の中だけは時間がゆっくり進んでいるような感覚に陥っていた。奥から女性が出てきた。するとdaichomanをみるやいなや「あら…確かあなた、息子と同級生の…」僕は初めて見る顔なのに、向こうは僕のことを知っていた。さすが、地域のお母さん特有のスペック。

午後という時間帯と母の日ということもあってか、ショーケースには空白が目立っていた。お目当てのシュークリームも売り切れてしまっていた。他の商品を見ると、た、高い…。カットケーキともなると300円以上は当たり前。自分の分も含めて500円以内でなんとかなるかな、なんて思ってた自分が甘かった。かといって「ケーキ1つ」なんていうのは自分の小さなプライドが許さない。悩みに悩み選んだ結果、イチゴが乗った400円くらいするショートケーキと、自分用には一番安かったチーズスフレを購入した

奥さんがケーキを手早く取りだして紙袋に詰めた。しかし、袋は閉じず、すばやい動きでショーケースの内側からぐるりと出てきて周りを囲っている焼き菓子コーナーから小袋をひとつひょいとつまみだし、「これ、サービス(^^」とケーキと一緒に紙袋へするすると入れてしまった。こーゆーとき、僕は本当は嬉しいのになぜか申し訳ない気持ちでいっぱいになって萎縮してしまう。おどおどした姿勢と声で「あ、ありがとうございますっ」と礼を言い、お金を払った。「ウチの息子と仲良くしてあげてね」と奥さんが優しい声で言い、こちらこそモゴモゴなんて曖昧な言葉を残してその場を去った

帰宅し、台所に立っていた母親に渡すとすごく驚いた顔と同時に喜んでくれた。お母さんはブラックコーヒー、僕は当時はまだ飲めなかったから日本茶を淹れてくれた。チーズスフレは食べたことのあるような味で新鮮味は少なかったけど、母親から一口貰ったショートケーキは上品な生クリームの甘さと重厚なスポンジとの組み合わせに思わず息をのんでしまうほどのおいしさであった

ケーキ屋の同級生とは高校は別々となったものの、塾でも相変わらず一緒で話す機会はあった。同級生は頭はよく、自分がもともと志望していたのに成績が足りず選べなかったレベルの高いA高校へと通っていた。僕はその高校に通う同級生をいいなーとうらやむこともあった

同級生は少しばかり神経質だった気がする。鈍感なdaichomanとはそんなに仲が良いとまではいかなかったが、二人で塾帰りにコンビニへ寄って店先で肉まんを頬張ったりしていた

高校も3年生となり大学への受験シーズン直前くらいのころ、同級生がで塾でいきなり暗い顔をしながら僕に話しかけてきたことがあった

「daichomanは、A高に来なくて正解やったと思うで」

そう言い残し、これ以上は何も話しかけないでくれといったような背中をして同級生は階段を登っていった



あとで母親にこの一連のことを話すと、母「同級生くんがそんなこと言ったとね…。確かに、A高出身の人から話を聞く限り、どの人も『A高では勉強ばかりで、本当の友達というのができなかった』って言ってるの。だからもしかしたら、その同級生くんはあんたの素直な性格を知った上でそう言ったんじゃないかしら」と僕に教えてくれた

塾を卒業してからは一度も会話したことはない。成人式でも会って話した記憶がないのだ。僕はあのときの同級生の言葉のおかけで、自分が通っていた高校がいかに恵まれていたのかということを知ることができた。自分自身勉強はできなかったけど、優しい友人たちにたくさんかまっていただいて楽しく過ごすことができたからだ。あのときの暗い顔をした同級生の顔を僕は今でも忘れない。







…ってアレ?なんの話だったんだっけ。そうだ母の日だ!お母さん似のおっちょこちょいな僕ですが、程よい距離感でずっと僕を叱り続けてくださいな