沈黙の裏側

月末の引っ越しに備え、今日は実家から母親がひとり車で来てくれた

次のアパートには持っていかなくてもよいと判断してまとめた荷物をとりあえず実家に置いてくれるからだ



早速母の貨物車に荷物を積んでいく

二人かがりで鏡台や折り畳み式ベッドなどの重いものから、ソフトボール用具一式、マンガ本、小中高大いままでもらった卒業アルバムなどなど

卒アルをわざわざ実家から探しだしてアパートに持ってきたのには理由がある。大学時代、友人の家に遊び行くと「卒アル見ようぜ」ということになり卒アルひっぱってきて「この子かわいいな」とか「こんな顔してるけど実は性格は…」とか「ハナチンコカナヤ」とかそーゆー話で盛り上がってるのを見ててだいちょまんはひそかにうらやましく思っていたのである

だいちょまんはつまらない自意識のために皆の前で披露することはなかった。高校卒業したとき実家の押し入れの奥の奥に卒アルを封印していたから。今になって思えば、あんなもん恥ずかしがらずに見せりゃよかったんだ、いい酒のアテになったのに。

その反省から重量のある卒アル全部をアパートに持ってきたのだが、結局日の目を見ることはなかった。そもそも家族以外誰もアパートにはあがっていない。…おかしいな、僕の予想ではステキな彼女と卒アル見ながらイチャイャするはずだったのに。





そんなこと考えながら車に段ボールを詰めていると、突然母親から尋ねられた

母親「ちょっとこの段ボール、水でじゅかじゅかしてるんだけど。なに入れたの?」

確かに底が濡れていて、車のシートがぐちゅぐちゅになっている

急いで外に出し箱を開けると、そこには空気清浄器が入っていた

両親から昨年プレゼントされたものである

ではなぜ水が漏れたか。おそらく、湿度を吸って溜まったタンクの水を捨てずにそのまま段ボールに入れ、車内で横にしたもんだからこのような悲劇が起きてしまったのであろう

すぐさま母親の鋭い平手が肩に飛んできたのは言うまでもない

母親「ほんとなら飛び蹴りしたいくらいよ!」

どうやら僕は、しゅとーといい母親といい人に蹴りたくさせるなにかを持っているらしい

これは使い道によっては将来役に立つ能力になるかもしれない…肩をさすりながら新しく段ボールを組み立てるのであった





小一時間ほどで作業は終わり、近くのお寿司やさんでお昼をとることになった


「やっぱりほうじ茶だよねー」「最近お父さんの運転がさ…」「よっしーは漬物好きじゃないんだっけ」「この茶碗蒸しおいしいねー」「昔は家でも作ってたんだけど、おねーちゃんが好まなかったのよね」「このこんにゃく、いいね!」などあーだこーだ話す。食に関して話が弾むのは母親似なのだろう







そうして母親とお別れし、家に戻りやや寂しくなった部屋を見渡すと以前スピード違反で有り難く頂戴した違反金支払いの用紙が幅を利かせていたので郵便局に行くことにした

支払いに行くためにはもちろん原付。その途中でもし再度捕まるようなことがあれば、もうブログのネタになるどころか笑えない。35キロ以上でないようにのろのろ運転で郵便局到着。これで一件落着






せっかく外に出たし、長崎ももうすぐ離れるのだから、以前から気になっていた場所へ行くことにした

原付で20分ほど峠を登り降りし、目的地へ


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遠藤周作文学館。

日本人の視点でキリスト教の本質を追及したことで有名な遠藤周作。この文学館がある外海地区は小説『沈黙』の舞台ともなっています。まだ読んでないけど。

ピース又吉さんが好きな作家のひとりであると知っていたので興味があり、遠藤周作のルーツをたどってみようと思った次第

確かにこの辺りは教会が多い。長崎とキリスト教はきってもきれない結び付きがあるようです




なにも知らない状態で入館したので、お固い所なのかなぁなんて思って展示物や書物を読んだんだけど…

周作さんって頭いいんっすね、みくびってました、さーせん!すげぇっす!マジパネェっす!リスペクトっす!…というような感想です( )



展示物見てメモしたことのなかからぐっときたのを抜粋してみます


「(追体験)私の取材は事実を集めるのが目的ではない。事実はとっくに調べてあり、頭のなかに入っている。私がこの土地に求めるのは、私の主人公たちがかつてそこで嗅いだ空気や、耳にした風の音、眼には陽の光、そして風景なのである。それを自分の心で確かめ、『彼はこの風の音をこう聴いただろう』『この海をこう見たはずだ』と想像する。そのことが小説を書くときの自信につながっていく」


追体験、その土地に立ち当時の住民はなにをどう感じていたのだろうか、と他者への想像力を追及することを遠藤周作は大切にした

亡くなった人も想いを馳せる限り、その人はずっと生き続けることができる

『歴史的事実』より『心象風景』とはこのことを言うのだなぁ、としみじみ

重く考えすぎるのはよくないかもだけど、この世に生まれてきた以上なにかの使命や宿命があるはずだし、そしてそれはいろんな人に興味を持つことから始まるのだろうと思います





そして遠藤周作は随書も面白い!っていうのがわかりました

エッセイ本大好き人間なので、いま楽しく読ませてもらってる途中です

ぐうたら人間学 狐狸庵閑話 (講談社文庫)

ぐうたら人間学 狐狸庵閑話 (講談社文庫)

(↑以前買ったまま本棚で眠らせてしまってた)






文学館を出ると、時刻は17時過ぎ。輝く太陽が地平線の彼方に沈みかかっていて、優しい赤に染まる夕焼けが眼前に広がっていました

夕陽が海に照らし出す光の道を見て、異国にいるマリア様を想いながら祈っていたのでしょうか

なんだか、わくわくする







…といいながら情景描写に自信がないので保険として夕焼け写真も撮ったけど (汗

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しばらくベンチに座って夕陽を眺めていると

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そろーりそろりとヤツは近づいてきた

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ヤツは臆することなく膝上に身を委ねてきたのだ。逆にだいちょまんの方が委ねられ慣れてないので緊張してしまう。内股になってやんの

風がびゅんびゅん吹いてて寒い

どうぞ僕のひざでよければ暖まっていってくださいな

猫の首筋や頭、からだ全体をさすってあげる

喉をぐるぐる鳴らしてる。これは気持ちがってる合図なのよって猫好きの母から聞いた覚えがある

しばらく続けていると、通りすがりのおじちゃんと目が合う。穏やかな表情で笑みの挨拶をしていただいた。こちらも笑顔でお返し

言葉はなくともこころは通じ合うことができるのだ




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「沈黙の日」


人間が

こんなに哀しいのに

主よ

海があまりにも

蒼いのです



遠藤周作