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春、登る

面接を終えた翌日の朝、だいちょまんは眠たい目をこすりながら散歩をしていた

すごく澄んだ青空。春の陽気で暖かい。こういう日はひたすら歩いて憂鬱な気分を晴らすに限る。昨日の面接で、面接官である6人の大人相手に醜態をさらしてしまった自分を思い返すと眠れなくて、いてもたってもいられなかったからだ

今日は知らない町を歩く。坂の多い街、長崎。山側に向かって歩を進める。


菜の花の独特な匂い

赤くて小さな椿の木

まるまる太った柑橘が道路に転がっている


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住宅街を抜けるといつのまにか自然が多くなり、街のざわめきは消え、その代わり、強い春風が吹いてザザザと木々がこすれあう音が聞こえるようになった


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いつの間にか林道を歩いていたようだ。時折車が通るだけで、人の姿はない。

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教会があった。キリスト教は日曜日にお参りをするんだっけ。きょうは土曜日だから静かだ

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だいぶ登ったな…

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いったいどこに向かっているんだ?…と不安になっていると、向こうから人影が。登山用の杖をつきながら歩くおじいさんでした

だいちょまん「こんにちはー」

おじいさん「こんにちは」

だいちょまん「あの…いま散歩しているんですけど、この先って何かあるんですか?」

おじいさん「烏帽子岳の頂上につきますよ」



烏帽子(えぼし)岳…佐世保に住んではいるけど、名前しか聞いたことなかったのよね。おじいさん曰く、道なりに進んでいけば小一時間くらいでたどり着くらしい。これは嬉しい情報!おじいさん、ありがとう


それから歩くこと30分…

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テレビ塔!長崎のテレビ局やラジオ局のロゴが書かれた電波塔が姿を現す。写真はFM長崎。あとで知ったけど、長崎は稲佐山佐世保烏帽子岳にテレビ塔が設置されているそう。ちなみに、昨日だいちょまんが受けた面接の企業のテレビ塔もありました

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山の中。涼しい。近くには自然の家やスポーツ広場があるみたい。そちらも気になるけど、山頂を目指します

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(バッグを漁ると、きのう面接前にコンビニで購入してたハイチュウを発見。疲れた身体に糖分補給。山登りでの甘いものは泣けるほどおいしい!)

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巨大な石を避け、300段ある階段をひたすら登ってゆく。ゼェゼェ肩を鳴らしながら。ここまでくると、ただの散歩が修行になります

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山のトンネルを抜けると、そこには恵比寿さま。望みは薄いけど、合格してますようにとお参りを。


そして遂に…

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山頂達成ー!!!

佐世保が一望できます。天気もよろしい。ただ強い風びゅんびゅん吹いてて寒いしよろけそう

だいちょまんがたどり着いたとき、先客の登山服姿のおじいさんがひとりいました。写真に頭だけちょびっと写ってるひと。最初に挨拶はしたんだけど、気持ちいい眺めに感動しているだいちょまんにそのおじいさんが話しかけてきました

おじいさん「学生さん?ここまでどのルートで来たの」

だいちょまんは無職の身なんですけど、佐世保の学生ということで合わせておきました。無職って言っちゃうと、怪訝な顔されたりもしくは気を遣わせてしまったりと心配なので。でも、やっぱり嘘はよくない

車道を歩いてここまで来た、就活中の学生と伝えると、そのおじいさんが佐世保の街並みをいろいろと教えてくれました



あすこに見えるのが大島と崎戸島、平戸、上五島も見えるかな

君の通ってる大学には昔ワンダーフォーゲル部があってね、そこの学生にアルバイトを頼んでいたからずっと親交があったんだよ

あの山は777㍍、その隣のぽこっと出てる山は613㍍、僕は黒髪に住んでいて、ずっとあの道から歩いてきたんだ

このあと君はどうするの?…特に決めてない?田代方面に下る?だったら、僕が登山道を教えてあげようか




…と、大きな声で話すおじいさんと一緒に下山する流れとなりまして 笑



あのここからは写真はないんですけど、登山道…めっちゃくちゃハラハラしたし大変だった 汗

もうガチな登山道なのよ。ちょっと命の危険もあるような。

だいちょまんはスポーツシューズにパーカー、ジーパンという軽装で山を登ったわけですが、まずそこを注意される



山登りする際は必ず登山用シューズ(できればロータイプ)で。撥水機能のついた上着を着用。山の天気は変わりやすいから。それと持ち物には必ず飲料水にチョコレートなどのおやつ、方位磁針、懐中電灯、レインウェアを。

実は下山の方が事故が多い。かかとに重心を、小幅で。石など突起物など利用しながら。登りはハの字で登るとよい

こちらが下っているときに登っている人がやってきたら。登る方を優先させ、自分は山側の木などにつかまって譲ってあげること。崖側だと倒されるキケンがあるから


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下ばっかり歩いていると、倒木に気づかず頭を強打する危険性。そんなときは先頭を歩くリーダーが、声をかけ注意を促す

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おじいさん「だいちょまん君。君ならこのあとどうする?」

だいちょ「え…まっすぐ進むんじゃないんですか?」

おじいさん「左を見てごらん。細いけど道があるでしょう。そんで木に赤いテープが巻いてある。この赤いテープが重要なんだよ。正しい道筋を示す目印。このまままっすぐ進んでいたらとんでもないことになるよ。見当たらなかったら立ち止まり、戻ることも大事」


おじいさんの言う通り、短い間隔で木に赤いビニールテープが巻き付けられているのです。ちゃんと意味があるビニールテープ。常に目を配ることが大事なのです




講義をしながらのおじいさんの話にビビりながらも、なんとかついていって、無事、登山道をクリアすることができました

ホント怖かった。。でもワクワク感が勝ってたかも




その後、広い車道に出たおじいさんとだいちょまん

相変わらず知らない道だなぁ…

自動販売機でいろはすを購入。生き返るとはこのこと。



おじいさんと並んで歩きながら話す

おじいさんは73歳。某有名企業をリタイヤ後、趣味として登山を始める

富士山をはじめとする日本の山は登頂済みだそうです


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小さなたこ焼き屋さんに寄り、ソフトクリームをご馳走になりました

ベンチに座ってすこし休憩。

おじいさんの息子さんやお孫さんの愚痴、バブル時代の話など身の上話も聞く

だいちょまんも昨日の面接での失敗談を聞いてもらいました





歩くの再開。そこからもおじいさんの道の詳しさは留まることをしらず、凄い知識量でした。そんで頭がイイ。

数十分歩き、とうとう目的地に到着。



おじいさん「もし◯◯(テレビ局)に就職したら、ぜひ僕のことを取材してね!」

だいちょまん「はい!いっぱいお話聞かせてもらって楽しかったです。ありがとうございました」



最後におじいさんが差し出す両手で強い握手を交わし、お別れしました



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帰宅。


疲労困憊のだいちょまん

足がパンパン



ちょっと横になろうと布団に腰かけた瞬間、一本の電話。




『だいちょまんさんですか?この度は、弊社の面接に参加していただきありがとうございました。昨日今日と面接試験日程を終えたのですが、会議の結果…だいちょまんさんを採用させていただくこととなりました』




テレビ制作会社さんからの、テレビディレクター採用の知らせだった



おじいさん、いや、ナカウチさん


ひょっとするとひょっとして

人生の楽園』的なコーナーがあったら、山を登るナカウチさんを取材させてもらう日が来るかも…しれません

その時はご協力よろしくお願いしますね 笑